2015/4/12 Sun

第2回:環境税とBid Price

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第2回:環境税とBid Price

安井 翔太

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 チーフデータアナリスト

2013年サイバーエージェントに入社。 入社前は、ノルウェーの大学院で応用経済学の研究をしつつ、環境税作成プロジェクトにデータアナリストとして従事。現在は経済学の考え方をデータ分析の切り口としてインターネット広告代理店の現場におけるデータ分析全般を担当。 休日にもデータ分析をしており、自分の住む部屋をデータ分析で決めたりしている。

こんにちは、データアナリストの安井です。
第2回の今回は、「環境税とBid Price」についてです。執筆を進めていくうちにコラム内容が長くなってしまったので、前編と後編の2回に分けてお伝えしてまいります。

さて、一ヶ月程前に、グローバルなDSP/DMPベンダーとして有名なTURNが、米国で5つの特許を取得しました。そのうちの一つに「Externality-Based Advertisement Bid Adjustment」という、メディアがRTBの際に、Bid Requestで開示する情報の量と質に応じて、アルゴリズムで算出した入札価格に修正を加えるというアイデアがありました。
実はこのアイデアは、環境税の税率を設定する際に用いられるExternalityという考え方をベースにしています。(特許の名前の通りですが。笑)

今回は、その“Externalityの概念が、何故インターネット広告で必要になるのか?”という前段階の解説をさせていただきます。
基本的にDSPは、一人一人に広告を表示させる価値を算出し、それに基づいた価格をSSPに入札しています。
※DSPの大まかな仕組みは、以下の図を参照して下さい。
例えば、商品購入をCVとする場合であれば、商品購入の平均的な売上に、クリックした際に購入を発生させる確率(CVR)を掛け、広告を表示した際にそれをクリックしてくれる確率(CTR)を掛けたものが、広告を表示させる価値になります。
よって、入札する金額を適正にするためには、“そのユーザーがどのくらいの確率でクリックするか?また、クリックした場合にはどのくらいの確率でCVするか?”ということを「予測」することが大事になります。(※図の③の箇所)

その予測を行うために、Bid Requestを通してメディアから受け取った情報や、あらかじめDSP内やDMPで保持している情報を利用します。
さて、やっと本題に入るのですが、この時にBid Requestの中に殆どデータがなければどうなってしまうのでしょうか?
言い換えると、メディアがDSPに対して情報を提供しない場合にはどうなってしまうのか?ということです。

当然、データを元に予測を行っているので、その元のデータが一部無いのですから、予測モデルが上手く機能せずに予測精度が落ちてしまうことになります。
そしてその予測は、入札価格を決める重要な情報を担っているので、その情報の精度の低下は間違った入札価格を決定することになってしまいます。
そうすると結果的に、DSPが広告主にとって、高い価値を持たないユーザーに対して高い入札を行い、無駄な予算消化をしてしまいます。高い価値を持つユーザーに対しては、低い入札でオークションで負けてしまい、重要なユーザーに広告を見せられないということになってしまいます。
つまり、データに欠損があるか否かが、DSPの効果そのものを左右しかねる要因となっています。そして一方で、ある程度の入札の量を得られるメディアにとっては、このデータの欠損は収益を左右する要因とはなりにくく、またデータを適正に入れる努力はコストがかさんでしまいます。
こういったデータの欠損に関する市場の欠陥を是正しよう、というのが、「Externality-Based Advertisement Bid Adjustment」というアイデアです。

このような市場の状態というのは何も広告に限られた話ではなく、昔から人類が相対してきた事象であり、環境問題を引き起こすような商品の取引などは、まさに同様の課題を抱えています。
そういった商品市場への介入方法の一つに、環境税を掛けて生産側に環境問題を押さえるインセンティブを設けるというものであり、「Externality-Based Advertisement Bid Adjustment」は、まさにデータの欠損に対して税金を掛け、メディア側にデータの欠損を押さえてもらおうとしています。

次回の後編では、この税金の部分に関して解説をさせていただきます。
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