2018/8/1 Wed

【特別対談】ブランド企業に訪問 ~Vol.1:KIRINの考えるインターネットシフトとは~

当社、ブランド広告企業のマーケティング支援を行う専門組織、次世代ブランド戦略室の責任者が、様々なブランド企業のマーケターに「インターネットシフト」について話を伺う連載企画。
第一回目となる今回は、キリンビバレッジ株式会社 マーケティング 担当部長の平野氏にお話を伺いました。

スマートフォンの普及・Wi-Fi環境の整備によって、SNSやWeb動画視聴等が消費者の生活において身近なものとなっており、それに伴い企業の宣伝プロモーションにおいてもインターネットシフトが進んでいます。当社ではいち早く、ブランド広告企業のマーケティング支援を行う専門組織「次世代ブランド戦略室」を設立し2年以上が経ちます。
広告業界でよく耳にする「インターネットシフト」について、各社の考え方、動向やメディアプランニングの変化・クリエイティブの多様化、また代理店に求めること及び今後の展望等、平野氏に伺います!

平野 真太郎 氏

キリンビバレッジ株式会社
マーケティング本部 マーケティング部
商品担当 担当部長

坂井 嘉裕

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 統括
次世代ブランド戦略室 室長

金子 彰洋

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 次世代ブランド戦略室
マーケティングサイエンス局 局長

-現職に至るまでのご経歴

平野氏:新卒でP&Gに入社し、今に至るまでずっとマーケティング業務をしています。当時は、電動歯ブラシのクレスト、生理用品のウィスパー、赤ちゃん用おむつのパンパースを担当していました。広告と言えばテレビと店頭で、2008年あたりから徐々にデジタルの話が出てきていたと思います。
転職をしてGSKという会社では、オーラルケアのアクアフレッシュとシュミテクトを担当しましたが、その時もやはりテレビと店頭が中心でしたね。特にシュミテクトは、テレビと歯科医でのサンプリングがすごく効いていて、クロスメディア分析でもその効果は分かっていましたので、当時はそのあたりに光が当たっていたかな。

2013~2014年くらいに、Web広告としてサーチとテキストとバナー、この3つをどう取り組むのか、という話題は多くなりましたね。
2015年に、日本の会社でエーザイに入りました。チョコラBBというブランドを担当し、LINEの公式アカウントでは、ともだち数650万人とかなり大きなアカウントに。そしてやり方を模索していく中で、「やっぱり動画ではないか」という話題が大きくなり、動画中心に広告運用していくという経験をさせてもらいました。

現在は、昨年7月からキリンに移り、今はビバレッジの領域で、コーヒー、炭酸、小岩井の果汁を商品とする、清涼飲料の事業部でマーケティングを担当しています。
-キリングループの広告宣伝・販促活動における、最近の関心ごととは

平野氏:私がキリンで最初に担当したコーヒーFIREチームでは、デジタルはもちろん取り組もうという意識はあるのだけれど、まだまだテレビが中心で、デジタルでも枠を買う、という発想がどうしても抜けないような状況でしたね。
今の関心ごとは、「デジタルをいかにうまく使うか」というところ。デジタルの予算は増やしてきてはいるのだけれど、それをどう活用し、狙っているお客様に対してどう届け、話題にするか。テレビに露出することも大事ですが、Twitterの中でいかに期待感を出せるか、などもより大事になってきているのではないかと思います。
 
デジタルの強みは、様々なデータが見られることですが、例えばクリック数・クリック単価がいくらなのかってデータとしては見られるけれど、あまりそれってピンとこない。結局、店頭に並ぶ商品が、実際に購買につながっているかがよく分からないんですよね。

エーザイ在籍時代のチョコラBBのプロモーション時に、サイバーエージェントさんから「態度変容で計測しましょう」と提案してくれたことをきっかけに、態度変容が可視化されたことによって、商品を知るようになった人、キャンペーンを知っている人、購買意向、実際に買った人、というところまでつなげて見られることができました。
踏み込んで、「データを見ることができた」というところが、購買につながっている、それも例えばターゲティングやクリエイティブなどによって効果の違いがある、というところまで、初めて可視化されたのはかなり大きな経験でした。

-活用が増えてきているデジタルを、社内で推進する上での課題とは

CA坂井:今までテレビを中心に、そこでの成功体験や売上げを伸ばしてきた実績もある中で、デジタルが少しずつ事例を立証してきているとはいっても、大きく舵を切ってインターネットに寄せていこう、と会社として意思決定をするのは難しかったのではと思います。
どのようにして、社内をその方向へ向かせていくかは非常に重要なことかと思うのですが、御社内での動きはどういった状況だったのでしょうか。
 
平野氏:そもそも、「デジタルだから」というよりは、その商材・ブランドをお客様にどう届けるかということ。私はシュミテクトの時に、サンプリングもやり方によってはものすごくROIを伸ばせるという経験をしているので、テレビ、デジタル、サンプリング、他施策であろうと、いかに効率的かつ効果的にお客様の態度変容が実現できるかという視点でいます。

そして、いま取り組んでいる清涼飲料に関しては、デジタルが強いのではないかな、とう考え方です。
社内においても、社員のご家族、例えば息子さんや娘さんがテレビを観ていないなとか、自分たちの身の回りの実感値としてあるので、デジタルが受け入れやすいというのはあると思います。弊社は、社員のデジタルに対する意識は高いほうだと思います。意識の高い人たちからさらに輪を広げていく、というところが今のフェーズという気がします。頭では分かっているけれど、新人などやり方が分からないというメンバーはまだいっぱいいますね。
 
CA金子:御社の体制として、デジタルマーケティング部とマーケティング部がありますが、それぞれの部門が存在することの良い点、また課題を感じる部分があれば教えてください。
 
平野氏:いいところは全体を俯瞰して見られる人がいるということ。ビールで何が起きているか、ビバレッジで何が起きているかなど、事業会社に制限されず、全体を俯瞰できる立場の人がいるということは大きいです。
また、お客様にその情報を届けるようなTwitterなどの施策以外に、例えばDMPなど技術的な話についてはデジタルマーケティング部が情報を持っている。全社的にどういう情報があるかをまとめて、互いをうまくつなげれば、さらにこういうことができるかも、という全体視点をもつ部署があるのが、良さかなと思います。

個人的な意見にはなりますが、事業部のマーケティングブランドマネージャーは、プロデューサーであってほしいと思っています。商品のことも広告のことも、プロモーションのことも考えるし、また、お客様の購買接点として、自販機、コンビニ、他様々なところといったように全体を考えてほしいなと。
デジタルのプロモーションは、下手すると丸投げになってしまうので。そうすると、自分自身の知見、経験値としては溜まっていかないから、デジタルのマーケティングスキルが上がらないままどんどんついていけなくなってしまうと良くない。
前提として、目的達成のために自分だったらどうやるかを考え、広告代理店さんにも協力をいただきながら考えてみる。広告代理店さんからもっといい案を出していただけるのであれば、そちらに替えればいいだけの話です。

-2020年までにデジタルマーケティングはどんな変化が起こりそうか
 
平野氏: 現在はスマートフォンがお客様の生活に欠かせないものになっており、このスマホを中心としたマーケティングプロモーションはしばらく続くと思います。またARなどの日々進化するテクノロジーがお客様のブランド体験の可能性を大きく広げてくれると期待しています。
 
CA坂井:販促、サンプリングもスマートフォンが手元にあることが前提です。サンプリングや店頭誘致においては、自社店舗を抱えているところだと分かりやすく、自社のアプリからクーポンを流す等さまざまな施策ができると思うのですが、メーカーという立場において、デジタルやスマートフォンを用いて販促活動に期待をしていることはありますか。
 
平野氏:私の担当してきた商材は、多くの人が自販機を含む店頭で購入する商品なんです。通販商材ですと、全てWebから始まり最後の効果の可視化まで既に確立されている世界ですが、店頭商材はそれが見えない。最近ですと、FIREでLINEサンプリングの施策を行いましたが、日々使うLINEを活用して店頭までの誘導が実現できるようになってきたのは、とても良い環境になってきていると思います。
 

-今後のデジタルマーケティングに期待すること

平野氏:最近はキリンレモンのプロモーションでTwitterの力ってすごいなと実感した事例がありました。テレビのGRPはそれほど投下してなかったにも関わらず、Twitterの世界だと存在感がちゃんと作れていて。それは、Twitter内で声が広がることがうまく設計できたからかなと思います。
テレビで流していないWeb動画素材を、Twitterユーザーは「CM」という言い方で投稿していました。TwitterなどのWeb媒体を日常的に使っているユーザーからすると、テレビもTwitterもYouTubeで見るのも、動画素材のCMとして同じ受け取り方なんだなと思い、「デジタルでいいんだ」という認識にはなりました。
「テレビCMは別格」って、我々のほうに意識が強くあったのだと思うのです。
 
CA金子:御社は、テレビ中心ではなくデジタルを中心にマーケティングを行うことが一般的になってきているという印象があるのですが、宣伝予算は全てテレビに投下しよう、といった話は特に出ずにスムーズに進んでいたのでしょうか?もしくは、社内向けの理解や説明が必要だったのでしょうか。
 
平野氏:とくに今年は、炭酸飲料はデジタルに予算を投じているのですが、去年はテレビがほとんどでした。スポットでポンと使い切ってしまうことが中心で、おまけ的にYouTubeのTrueViewを流して、とやっていたのです。
炭酸飲料は、1週間に1回買う人をヘビーユーザーと称していますが、非常にロイヤルティは低いのです。この週は購入するかもしれないけれど、翌週以降は商品情報がずっと目に入らない、耳にも入ってこないという状況があり得る。継続的に情報を流せるようにしたいというのが最初の導入きっかけです。
 
特に飲料は、コンビニでパフォーマンスが悪ければ、半年待たずしてすぐに棚落ちしますから、継続して盛り上げ、お客様に届くことが大事です。
当然、テレビの力も理解しているから最初に使うけれど、あとはデジタルできちんと夏まで山を何回か作れるのか、というように考えているところです。
 
お客様に対し、トライアルがとれたらロイヤルティ高く継続してずっと買ってくれるという商材で、かつ広告予算も潤沢であれば、テレビにひたすら注力するというのは全然ありだと思いますが、炭酸を飲むときのお客様は、基本移り気なので、我々もそれに合わせた広告や話題化を、限られた予算でやらなければいけない。そうなると、おのずとデジタルのほうが向いているのだろうなと。
 
CA金子: マスメディアに対して期待している部分があれば教えてください。
 
平野氏:テレビの良さというのは、圧倒的に早く全国のあらゆる世代の人に認知をキュッと上げることに強いこと。それがテレビを使う一番の理由。あとは商談上、話が早いというのがあるのですけれど。
今後だと、テレビ番組やラジオなどそれ単体というよりは、スマホやデジタルという場を使って、いかに話題を作れるか、ということが必須になってきますよね。自分はそれをどう感じたか、周りの人がどう受けているのかというのは、デジタルを介することでダイレクトに感じられます。

-今後、広告代理店に期待すること

CA坂井:広告会社やメディア企業、また総合代理店さんのみならず我々のようにインターネットに軸足を置いている代理店など、様々なパートナーさんとのお付き合いがあるかと思いますが、今後、代理店に期待することは何でしょうか。
 
平野氏:御社のいいところだとも思っているのですが、各種メディアをニュートラルに捉えプランニングができるということは大事です。テレビの力も分かっていて、そしてデジタルにおいては、例えばGoogle、Facebook、Twitterなど各々の媒体をニュートラルに見られるということ。私も各媒体の方々と話をする機会もありますが、フラットに全体設計をして、効果を追えるということにとても感謝しています。なので、このような実務のプランニングがまず一つ。
 
もう一つは、我々の接点になる、営業の方。営業の方がデジタルにおける媒体の特性や技術的なことなどをきちんと理解しているか。これは、結構差が出ます。理解できていない営業の方だと、「分かりました、持ち帰ります」となり、その場で話がスムーズに進まなくなってしまいます。これって、とても勿体ないですよね。
 
あとはやはり、チーム編成に対して柔軟性のある代理店さんはいいなと思います。私のような立場からすると、色んなスペシャリティを持っている社内外の人たちで良いチームを作りたいと思うので、その思いに共感してくれる柔軟性があると嬉しいですね。

平野 真太郎 氏

キリンビバレッジ株式会社
マーケティング本部 マーケティング部 商品担当 担当部長

2005年P&Gジャパンからマーケティングキャリアをスタートし、英国系薬会社GSKではシュミテクトとアクアフレッシュのブランドマネージャーを務める。エーザイ株式会社に転職しチョコラBBブランドのマーケティングを統括、その後2017年7月にキリン株式会社に入社。現在はキリンビバレッジ株式会社にてコーヒー(FIRE)、炭酸(キリンレモン、Metsなど)、果汁のマーケティング担当部長を務める。勝てるマーケティング組織作りとPDCAの強化に注力している。情報学修士。

坂井 嘉裕

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 統括 次世代ブランド戦略室 室長

2008年、サイバーエージェントに入社。 インターネット広告事業本部に配属後、一貫して営業部にて、国内外・業界問わず幅広い業界のクライアントを担当。現在、営業部門を統括する傍ら、2016年4月より立ち上げた次世代ブランド戦略室の責任者を務め、デジタルマーケティングの価値向上に取り組む。

金子 彰洋

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 次世代ブランド戦略室 マーケティングサイエンス局 局長

2012年、サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部にてクリエイティブ、データ、メディア、リサーチ各領域の専門職を経て、現職。次世代ブランド戦略室のプランニング責任者を努める。 現在、自動車/飲料/化粧品/アパレルなど国内外幅広い業界のプランニングディレクターを担当。ブランド広告特化型DSPやメディアプランニングツール、リサーチソリューション、クリエイティブ分析メソッドの開発も行う。

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TEXT:加藤 貴子 (株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部)
PHOT:杉 麻子  (株式会社サイバーエージェント Design Factory)
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