2018/1/29 Mon

年間7,200本の広告運用から得た動画広告クリエイティブPDCAのコツ

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中田 大樹

株式会社サイバーエージェント 執行役員
株式会社CyberBull 代表取締役

昨今の動画広告市場の成長は著しく、2017年の国内動画広告市場は1,374億円と前年比163%の成長を遂げました。特にSNSのタイムラインやニュースメディアのフィード内に表示される「インフィード広告」の市場の拡大は顕著で、動画元年と呼ばれた2015年からわずか2年のうちに6.4倍の市場成長を遂げています。 
サイバーエージェントグループの広告代理事業において、動画広告を専門に扱う代理店、株式会社CyberBullでは、ダイレクトマーケティングから企業や商品のブランディングまで様々なお客様のマーケティング支援をさせて頂いており、昨年2017年は、年間7,200本の動画広告の制作・配信をお手伝いさせて頂きました。
 
本コラムでは、制作工数がかかりPDCAを回すことがなかなか難しい動画広告のクリエイティブ運用において、どうすれば効率的に効果の良い運用を行うことができるかをお伝えしていきます。
 
 
●動画広告のポイントは複数クリエイティブの運用
まず前提として、大手Webメディアは、何年も前から従来の純広型からリアルタイムに広告枠を売買する運用型の広告にシフトしています。少し前は、テレビCM用に用意した動画素材をそのままWeb広告に転用するケースが多く見られましたが、この配信方法は運用型広告には適していません。
Web広告は配信メディアのアルゴリズムによって、単一クリエイティブに絞った広告配信を行ってしまうと、開始から数日ですぐにクリエイティブが疲弊し、広告のレスポンス(CTR、CVR)が低下し広告効果が悪化してしまうという特徴があります。
 
以下のグラフは、過去に弊社で行った広告キャンペーンにおいて、①単一クリエイティブを配信した場合と、②複数クリエイティブを用意して運用した場合の疲弊率(※)の変化を比較したものです。
※疲弊率
動画広告の配信初日の3秒再生率を100%とした場合の翌日以降の変化値を意味します。
パーセンテージが低くなればなるほど3秒再生率が日を追うごとに低下し、生活者から「見られていない状態」となることを意味しています。

 
①単一クリエイティブを配信した場合の実績は赤いグラフ
②複数クリエイティブを広告効果に合わせて運用した場合の実績は青いグラフ
 
②の青いグラフを見てわかるように、複数クリエイティブをこまめに運用することで、配信開始から12日が経過しても配信初日とほぼ変わらない3秒再生率を維持することができています。
逆に、①の単一クリエイティブの配信は、2日目にはもう60%まで減少しておりすぐに見飽きられてしまっていることがわかります。静止画と同じように動画もクリエイティブの出し分け、差し替え、ABテストなどの「クリエイティブ運用」の必要性が証明されています。
 
つまり、動画広告で大切なことはシンプルに「いいものをたくさん作る」ことです。これからは特に、ブランドクリエイティブの領域においてもデジタルは動画広告のクリエイティブを複数本作って運用していくというケースが増えていくと思います。
 
 
●動画広告における精度の高いクリエイティブ分析/検証方法
複数クリエイティブの運用が重要とお伝えしましたが、まずは複数クリエイティブを用意できる体制と配信したクリエイティブをスピーディーに分析・検証できる仕組みづくりが大切です。そこで次に、効果的なクリエイティブ分析方法についてご紹介します。
 
動画は伝えられる情報量が多い反面、企画・構成・尺・音・画角など検証要素が多く複雑です。クリエイティブ分析の最短距離はないものかと「媒体ごとに適切な尺や画角のルールはないのか?」と聞かれることもありますが、厳密にはないと考えています。
 
クリエイティブの内容によって長尺でも最後まで見てもらえるものもあれば、短尺でシンプルに伝える方が広告効果の高いものもあります。ここについては題材となる商品のUSPやコミュニケーション戦略によっても変わってくるので、一概にプロモーション前に決めつけてしまうことは逆に効果悪化へのリスクだと考えています。(過去、同商品におけるデジタルのクリエイティブテストが無い場合は特に)
 
では、どのように効率的に動画広告のクリエイティブPDCAを回すべきかでいうと、一度にすべてのクリエイティブ要素を分析するのではなく、広告効果へのインパクトがもっとも大きい要素をまずは切り出して分析・最適化をかけることが重要です。
 
広告効果に対する影響度が高い検証要素は主に2つあります。
 
①アテンション検証
スマートフォンに接触する生活者が「指を止めても見たい」と思ったか。
 
②大訴求軸検証
伝えたいメッセージを動画で表現した場合、どの訴求軸(切り口)が支持されるか。
 
あらかじめ、この2軸についてPDCAを回すつもりで動画素材を用意しておくことで、配信から約1週間のうちにスピーディに行うことが出来れば、それ以降のプロモーションは細かいクリエイティブのマイナーチェンジにより安定的且つ効率的に広告配信を行うことが可能となります。

 
●重要なのは運用を見据えた動画広告クリエイティブ企画
さらに、配信からスピーディーに効果検証を行うためには、企画の時点で運用を見据えた設計にしておくことが重要です。
先ほどの「アテンション検証」は「Attention」、「大訴求軸検証」は「Content」にそれぞれ値しているのですが、配信結果に合わせてリアルタイムで運用を実現するために、同じカットでも違う画の撮り方をするなど、1回の撮影で大量の動画素材を撮影しています。効果検証の際にはそれらを組み替えて検証することができるのでスピーディーにPDCAを回すことができます。
 
効果検証の指標としては、リアルタイムでの運用においてはCTR、再生率、完全視聴率といったWeb上で計測可能な指標を設定しています。態度変容や認知率の向上については広告配信後に検証することになりますが、我々の調査で視聴率と認知には相関性があることが判明しています。そのため、基本的には視聴率という指標を追うことでキャンペーン自体も成功するであろうと仮説を立てて運用しています。
 
 
●最後に
動画広告の登場による一番の変化はクリエイティブです。リッチ化した広告コミュニケーションに対して、バナー広告のように柔軟な運用で効果を最適化できているかというと、特にブランド領域においてはまだまだ課題があると思っています。今も新たにテクノロジーを取り入れた映像制作の仕組みを開発しているので、より効果の高い動画マーケティングの支援を行っていきます。
また、媒体のアルゴリズム上、クリエイティブを運用するということは避けて通れない領域ですが、そこに囚われすぎるとクリエイティブが面白くなくなってしまう、という危険性も感じています。運用変数とクリエイティブ変数はあくまでバランスが重要だと考えているので、運用する前提でクリエイティブの本質である心を動かすようなアウトプットを、デジタルからたくさん輩出していきたいと考えております。
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